用語解説・・相続  

A12 相続に関する法律用語


相続とは
 相続というのは、亡くなった人の生前に持っていた財産上の権利義務を他の者が包括的に承継することをいいます。この場合の亡くなった人を被相続人といい、承継する人を相続人といいます。
 相続は、被相続人の死亡だけを原因として開始することを「相続の開始」といいます。旧民法では、家督相続の開始原因とされた「隠居」という制度がありましたが、現在の法律ではこの制度はなくなりましたから、生前にその人について相続が起こることはありません。

遺贈とは
 遺言によって財産を贈与することを遺贈といい、包括遺贈と特定遺贈とに分かれています。ただし、遺贈は遺留分を害するものであってはいけません。〔民法964〕
 包括遺贈とは、遺産の全部とか半分といったように割合を示して行うもので、その割合に相当する遺産の権利義務を承継することになります。した
がって、プラスの財産だけでなく債務のようなマイナスの財産も引き継がれます。また、包括受遺者は相続人と同一の権利義務を有することになります。〔民法990〕
 特定遺贈とは、遺産のうち特定の資産を指定して行う遺贈をいいます。一般的にはこの方法により遺言することが多いようです。

親族とは
 民法では、親族の範囲を次のように規定しています。〔民法725〕
 (1) 六親等内の血族
 (2) 配偶者
 (3) 三親等内の姻族

血族とは
 生理的に血筋のつながる血縁者をいい、これを自然血族といいます。このほかに、養子縁組したものは養親及びその血族との間にも血縁があることと同じだとされており、これを法定血族といいます。〔民法727〕
 血族には、父方の血をひいたものと母方の血をひいたものとの二つがあります。

姻族とは
 妻の兄弟といったような自分の配偶者の血族、また血族の配偶者を姻族といいます。この姻族のうち、三親等内の姻族が親族とよばれるものです。

直系と傍系とは
 同一の親系、つまり父祖から子孫へ直通する親系を直系といい、直系の属するものを直系親といいます。
 傍系とは、兄弟や従兄弟など同一の始祖をもつ別の親系で、相互にこのように呼び合います。

尊属と卑属とは
 血族または姻族のうち、自分または配偶者の父母と同世代以上のものを尊属、子と同世代以下のものを卑属といいます。つまり、父母・祖父母は直系の尊属、おじ・おばは傍系の尊属であり、子・孫は直系卑属、甥・姪は傍系卑属ということになります。
 しかし、自分と同一世代にある兄弟姉妹・従兄弟などは、尊属でも卑属でもありません。

親等とは
 親族の遠近度を表す単位で、一世代、つまり一つの親子関係を一親等として計算します。したがって、親子は一親等、祖父と孫とは二親等といった具合になります。
 このように直系の場合は簡単に計算できますが、傍系の場合はむずかしいです。すなわち、本人またはその配偶者から同一の始祖にまで遡り、その始祖から他の人に下がるまでの世代数、つまりAとBが兄弟だとすると、まずAからその父親に遡り、父親からBに下がるまでの世代数は二親等ということになります。また、CとDが従兄弟だとすると、Cの父親から祖父まで遡り、祖父からDの父親、そしてDに下がるまでの世代数は、四親等といった計算になります。

親族の発生と終了とは
 血族関係は、出生によって発生します。胎児にも相続権が認められています。〔民法886〕
 法定血族(養親子関係)は、養子縁組により親族関係が、婚姻によって配偶関係が生じます。
 血族関係は、死亡によって消滅しますが、それ以外の消滅はありません。  法定血縁関係は、死亡のほか、離縁によっても消滅します。養子が離縁すると、養子の子も養親とその血族に対し他人となります。〔民法729〕
 婚姻関係は、離婚によって消滅します。〔民法728〕

法定相続人とは
 遺産を相続する者は民法で定められており、これを「法定相続人」といいます。
 相続人と相続の順位は、民法では次のようになっています。〔民法887〜890〕
第一順位の相続人は子です。
第二順位の相続人は直系尊属(父母、祖父母など)です。
第三順位の相続人は兄弟姉妹です。兄弟姉妹が、被相続人の死亡前に死亡しているときは、兄弟姉妹の子(被相続人の甥姪)が代襲相続人となります。
被相続人の配偶者は常に相続人となり、上記の順位に従って相続人となった者と、同一順位となります。

法定相続分とは
 相続分は、被相続人が、各区相続人の遺留分を害さない限度で、遺言によって財産の分配を指定できますが〔民法902〕、民法では法定相続人に対して「法定相続分」が次のように定められています。〔民法900〕
・配偶者と子が法定相続人の場合 ・・・・・・・・
配偶者 2分の1
2分の1
・配偶者と直系尊属が法定相続人の場合 ・・・・・・・・
配偶者 3分の2
直系尊属 3分の1
・配偶者と兄弟姉妹が法定相続人の場合 ・・・・・・・・
配偶者 4分の3
兄弟姉妹 4分の1
・配偶者だけが法定相続人の場合 ・・・・・・・・
配偶者全部

 なお、この「法定相続分」については、次のことに注意してください。
子、直系尊属、兄弟姉妹が複数いる場合には、各割合を均等にします。
非嫡出子は、嫡出子の相続分の2分の1になります。
養子は、実子と同じ相続分です。
代襲相続人の相続分は、その親の相続分を均等分します。
遺言がある場合は、法定相続人以外の人でも遺産を取得できます。
実際の相続は、法定相続分によらないで、相続人等の全員の合意によって遺産分割協議をして決めることができます。

内縁の地位とは
 内縁はあくまで正当な法律上の夫婦でないので、内縁の妻あるいは内縁の夫には相続権はありません。

嫡出子と非嫡出子とは
 子供の両親が夫婦であり、婚姻中に懐胎された子のことを嫡出子といいます。一方、婚姻によらないで生まれた子供を非嫡出子と呼んでいます。

養子とは
 養子とは、養子縁組によって法定の嫡出子である身分を取得したものをいいます。つまり、養親の財産に対し、実子同様相続の権利を持ちます。ことばを変えれば、本来まったく血縁関係のないものを、血縁があるようにみなす法律上の制度です。この養子縁組は、婚姻と同じように、養親となるべき人の署名押印のある養子縁組届を役場に出すことで成立します。
 養子縁組は、祖父が孫を養子にするといったことも可能です。ただし、相続税の総額の計算上法定相続人として扱われる養子の数は、被相続人に実子がいる場合には1人、実子がいない場合には2人までです。しかし、相続税の負担を不当に減少させる目的の養子と認められたときは、前記にかかわらず法定相続人の数に含められない相続税法の規定があります。なお、民法上の特別養子や配偶者の連れ子である養子、実子の代襲相続人は実子とみなされます。

代襲相続とは
 被相続人の子が、相続の開始以前に死亡したときや相続欠格事由に該当したり廃除によって相続権を失ったりした場合には、その者の子で被相続人の直系卑属である者が、相続人となるはずであった子に代わり代襲して相続人になることを「代襲相続」といいます。〔民法887〕
 また、被相続人の兄弟姉妹が相続人である場合で、被相続人の相続の開始以前に死亡していたり、相続権を取り上げられたりして相続できないときは、その者の直系卑属である被相続人の甥、姪までに限って代襲相続人になれます。〔民法889(2)〕

相続欠格とは
 民法の規定によって相続人になるはずの人でも、被相続人を殺害したり、だましたりおどしたりして遺言をさせたり、遺言書を偽造するなど一定の不徳行為をした場合には、相続人になることはできません。これを「相続の欠格」といいます。〔民法891〕

相続人の廃除とは
 遺留分を有する推定相続人が、被相続人の生前に被相続人に対して虐待したり、重大な侮辱をしたときや、相続人としてふさわしくない非行があるなど、法律上一定の原因がある場合には、被相続人は、家庭裁判所に申し立て、相続権をとりあげてもらうことができます。これを「相続人の廃除」といいます。〔民法892〕

相続放棄とは
 相続人が、相続財産の承継を全面的に否認することです。相続の放棄をしようとする者は、相続の開始があったことを知った日から3か月以内に、その旨を家庭裁判所に申述しなければなりません。〔民法915,938〕
 相続放棄の結果、相続の放棄者は、初めから相続人でなかったものとみなされますので〔民法939〕、放棄者を代襲相続することはありません。また、相続分は、放棄者を相続人に入れないで算定します。

限定承認とは
 相続人が相続財産の限度でのみ、被相続人の債務と遺贈を弁済するという留保条件をつけてする相続の承認のことです。
 限定承認は、相続の開始があったことを知った日から3か月以内に、財産目録を調整して家庭裁判所に提出し、限定承認をする旨を申述しなければなりません。〔民法915,924〕
 また、一部の相続人の限定承認を許すと清算が複雑になることから、相続人が数人あるときの限定承認は、共同相続人の全員が共同してのみこれをすることができることになっています。〔民法923〕

遺留分とは
 特定の相続人に認められた被相続人の処分を規制できる相続財産の割合額のことをいいます。
 被相続人は自分の財産を遺言によって自由に死後処分できることは、民法で認められています。しかし、自分の財産だからといって遺言で処分することは、被相続人死亡後の遺族の生活を保障しなければならないことや相続人間の公平を図ることなどに問題がありますので、相続財産の一定部分を一定の範囲の遺族に留保させるという民法で定められている制度です。〔民法1028〕
 遺留分の割合は、直系尊属だけが相続人の場合は被相続人の財産の3分の1で、その他の場合(直系卑属・配偶者が相続人の場合はどんな場合でも)は2分の1です。兄弟姉妹には遺留分はありませんが、代襲相続権者には遺留分が認められます。

遺留分の減殺請求権とは
 遺留分権利者やその承継人は、遺留分を保全するのに必要な限度で、遺贈や贈与の減殺することができます。〔民法1031〕
 すなわち、被相続人が、あまりたくさんの遺贈や贈与をし過ぎて、相続人の遺留分にくいこんでしまったときは、相続人やその承継人は、そのくいこまれた分だけを、その遺贈や贈与から取り返すことができるということです。
 この権利は、遺留分権利者が相続の開始と減殺できる贈与のあることを知った日から1年、又は相続の開始のときから10年経つと、時効によって消滅します。〔民法1042〕

遺言とは
 遺言は、人の最終意思を尊重するために認められた制度です。
 遺言は、遺言者の死亡の時からその効力が生じることから〔民法985〕、遺言者の真意を確保し、偽造や変造を防ぐために厳格な様式性が要請されています。そして、その性質上、遺言ができる事項は、法律で決めていることがらに限られます。
 その遺言できる事項は、相続に関係のない身分上のことと相続に関係がある財産上のことがらで、次のような項目です。
結婚外でできた子を自分の子と認めること(認知)。〔民法781〕
子供の後見人又は後見監督人を指定すること。〔民法848〕
自分の死後、遺産を誰かに与えること(遺贈)〔民法964〕、寄附行為〔民法41〕、信託の設定〔信託法2〕。
相続分の分け前を決めること(相続分の指定)。〔民法902〕
相続人の資格を失わせること(相続人の排除)〔民法893〕、又はその取消し。〔民法894〕
祭具等の承継者の指定。〔民法897〕
特別受益者の持戻免除及び遺産分割の禁止。〔民法903,908〕
遺産分割方法の指定又は指定の委託。〔民法908〕
相続人相互の担保責任の指定。〔民法914〕
遺言執行者の指定又は指定の委託。〔民法1006〕
遺留分減殺方法の指定。〔民法1034〕

 遺言の方法は、民法で厳格に定められており、一般的に用いられる普通方式と、死にかけているなど特別の状況のもとで用いられる特別方式とに分けることができます。
 普通方式の遺言には、自筆証書遺言〔民法968〕、公正証書遺言〔民法969〕、秘密証書遺言〔民法970〕があります。
 特別方式の遺言には、臨終遺言として一般臨終遺言〔民法976〕、難船臨終遺言〔民法979〕があり、また隔絶地遺言として一般隔絶遺言〔民法977,980〕、在船隔絶遺言〔民法978,980〕があります。
 この遺言の詳しい方法については、せっかく作成した遺言が無効にならないためにも、必ず専門家(弁護士など)にご相談ください。

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